Sain'o O『ヒグラシ』について


暑さが少し落ち着いてきた頃、樹々の合間から橙色の斜陽が差し

心地よく懐かしい鳴き声がふと聞こえ出す、

思い出すのは昼間の喧騒かあの頃の記憶か

夏はいつも鮮明で儚い思い出に姿をかえ、心に残っています

夏は力強いからこそ儚く、儚い故に忘れまいとして鮮明に心に残るのであろうと思います。

 

夏特有のダイナミックで雄大な情景、夏の”終わり”に感じるなんとも言えぬ喪失感

一見対極にある様で表裏一体なこれらのイメージを表現できればと思いながらヒグラシの音を調整しました

特に、リバーブ入道雲の大きさや夏の空間の立体感や

夕暮れのどこからともなく聞こえてくるヒグラシとの距離感をイメージ

ギターの音色は古民家の縁側の木材や砂利、水などのテクスチャをイメージ

歌声は空間に存在する意識や記憶をイメージしています

 

とてもシンプルな音構成なので想像する余白が大きく、日本人のトラディショナルなイメージにも近いはずなので心と混ざりやすい楽曲なのではないでしょうか?

 

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なつ

2020年の締め括りに近いこの時期に

アルバムSain'oOの最後を締め括る曲ヒグラシの記事を書けてよかったです

レコーディングミックスマスタリングとドラムの担当という立場からの切口で書いた一連の記事楽しんでいただけていたら幸です。

そして土橋悠宇くんをはじめ、多くの人が想いや意匠や熱意や技術を注いで作り上げた『Sain’oO』という作品を楽しんでくれて、永く愛していただけたら幸です。