Sain'o O『Sain'o O』について

こんにちは、ブログのペースを3日に1回くらいのペースに落ち着かせたいところです、、、

 

今回はアルバムのリードトラックであるSain'o Oについて書いていこうと思います

 

この曲は万国共通の普遍的な景色が見える曲なんじゃないかなと思います

 

自分がこの曲を聞いた第一印象は風が吹く金色の草原と融和でした

 

歌詞が既存の言語ではない部分も印象の根拠になりました

 

土橋君とこの曲のイメージについて話したときおおよそ同じ景色が見えてることがわかってびっくりしました(小並感)

 

ということで、まずギターと歌をデモ録りして、それらを聞いて頭の中で鳴った楽器(ストリングスやドラムロール、トランペットなど)を追加するところから作業がスタートしました

 

最終的にはギターとボーカルに加えて、波の音(これも実際に土橋君が収録したもの)タンバリン、ドラムロール、アフリカンパーカッション、ストリングス、シンセ、クワイヤ、トランペット、ベース、ドラムなど

多彩な音が含まれる音源となりました、にぎやかでエキゾチックな仕上がりになったのではないでしょうか?

 

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この曲で自分はドラムも演奏させていただきました

ドラムでは曲のイメージの中の大きく吹く風や広がり、ゆったりしたおおらかな感じを表現することを目標にフレーズを組みました。

この曲のギターは3拍子なのですが、ドラムは2拍3連を軸にフレーズを組み立てています、これによってテンポが3割ほど遅くなったように感じます

ただし、フレーズの中身は8分音符や2拍3連の4分音符に対する3連符なども使っているので3拍子の2倍ほどのテンポ感も感じることができると思います

 

また、ドラムに細かい音符が存在することでアフリカンパーカッションやベースなどほかの楽器同士が融和する助けになるという側面もあると思います。

 

 

少し複雑な話になりましたが、こういうテクニカルな要素も考慮して作り上げていきましたという一例として楽しんで頂ければ幸いです。

Sain'o O『僕の命はそこにある』について

こんばんは

今回はアルバムSain’oO収録の『僕の命はそこにある』について書いてみます

 

この曲のテーマの一つは自然と人間のせめぎ合いだと思います

 

自然には知性や言葉はない、人間には知性と言葉がある

ただ、許し受け入れてくれているのは果たしてどちらなのだろうか

そんなことを考えさせられます

 

人間も自然の一部であるはずなのに、いつしか命の場所を立場を


忘れてしまいがちなのではないか?

という問いが聞こえた気がします

 

また情景としては、自然と隣り合った工場、木と鉄と風のイメージ・質感を出せたらいいなというつもりでミックスに臨みました

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System+gear

曲中にはギターとボーカルのほかにアフリカンパーカッションとピアノ、そしてドラムが登場します

アフリカンパーカッションはひしめき合い大自然のシステムを作る植物や生き物たちを

 

ピアノは悠久の時間の中で形作られ、生き物たちを守り育んできた雄大で力強くも優しい、そんな自然界の息吹を

 

ドラムは世界の中で営まれる人間の業、産業や農耕など人工的で整然としていて冷たくもあり、同時に一生命としての温かく混沌とした側面を

 

それぞれの楽器の立ち位置として思い描きました

 

それらの摩擦と調和が(現実の自然界と同様に)

音楽の中で表現される結果になったかなと思います

 

 

Sain'o O『五月雨』について

こんにちは、ご無沙汰しておりましたすいません…!

いくつかの動画編集のほうに追われていました、

一つは6/27にFacebookで配信された始まりの森プレゼンツの土橋悠宇君のソロライブですね

この記事を読んでくださっているあなたにとっては楽しめるコンテンツかもしれませんのでそちらも是非

僭越ながら撮影も担当させていただきました、リンクを貼っておきます↓

https://www.youtube.com/watch?v=oozhXnX9flg&t=1021s

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さて、改めて今回は五月雨について書いていこうと思います

 

この曲は非常に幻想的ですね

ギターのフレーズは雨そのものというイメージでした、歌詞の内容は追憶、記憶、イメージ、そういった精神世界の中に存在するリアルといった景色だなと感じました。

蛇足ですが、個人的にこの曲の描写は心にグググッと喰い込むものがありました

 

精神世界というのは

人間個人個人でいろいろな形があると思いますが

現実と仮想の境界線があいまいであったり、過去と現在と未来が同時に存在できたり、選択によって得られたもの失ったもの、得ていたかもしれないもの失っていたかもしれないものも同時に存在できる

 

様々な瞬間に感じた質感、におい、色、音、空気感など

 

色々なものが泡沫のように漂っている

 

そんな場所だと思います、

 

『五月雨』はそんな精神世界に”こびりつく”或る日常を描けたらいいなと思ってミックスとアレンジをしました

 

ある日のレコーディングの中でエレキギターを録音する際、『クジラの声みたいな音』を録るということになりました。

ならば、水繋がりで海

それも光が届かないような深海というキャラクターも付加してみようということになりました。

深海と精神世界、どちらも地球や人間が内に秘める小宇宙といったものでしょう、とても親和性の良いアイデアでした。

 

深く、終わりのない瞬間の世界が完成しました。

 

さらに、今回の五月雨で聞いていただきたいのが雨+遠雷です

土橋君が収録してきてくれたいくつかの雨の音源の中から、

歌詞の情景に沿ったものを選び、曲中に配置しました。

 

梅雨に入るか入らないかの時期の雨によって想起される空気感、日常の憂い、孤独ではないからこその不安、狭いはずの部屋をとても広く感じてしまう感覚、雨音が分からなくなるほど心がうるさくなる無音

 

そんな感情感覚越しの雨を感じていただけたら幸いに思います。

Sain'o O『たんす』について


こんにちは

 

今回は土橋悠宇Sain'o Oから『たんす』について回顧してみます

たんすについてはドラムも叩かせていただいたので、ドラマーとしての視点もわずかに交えつつ書いていきます。

 

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このたんすという曲、第一印象はやはりダンサブルな曲、裏ノリでファンキーなグルーブが素敵

でした。

キメの位置、グルーブのウェイトポイント、リフのアクセント、弾き語りを聞いた時点でドラムが見える!とエキサイトしたのを覚えています。

 

歌詞に含まれる感情的な要素も、熱を帯びつつも重苦しくなくグルーヴィーで新鮮な感覚になりました、アウトロに向けてエネルギーが増していくイメージも心地よい流れで素敵でした。

 

ということで、個人的には

フレッシュ、ホット、クール、エアリー、

そんな単語がフィットするミックスになるようにという着想でスタートしました。

 

しかし、たんすは特に関わっていただいた演奏者の方々が多いです

ブルースハープ

べース

ブラス

エレキギター

そして自分のドラム

 

それぞれのプレイヤーの個性も楽曲のキャラクターの一部として生かせるようにfixしていきました

 

各楽器とも同じ方向を向いて集ってくれていますが、『同じ方向』に対する解釈の多様性が介在しているので、しっかり個性的であるわけです。

 

それらを『たんす』という1人格にまとめ上げるのはなかなか大変でした

 

しかし、せめぎ合う個性や考え方

それらの絶妙なバランスを見つけようとして起きた葛藤と選択の結果として今回の音源のような『たんす』が出来上がったといえると思います。

 

 

自分が思ってもみないようなところに辿り着くことがある、そんなところが面白い。

人と人の関わりの妙を感じることができました。

 

土橋悠宇の"たんす"をApple Musicで

Sain'o O『蝉』について


一念発起した勢いで今回制作にエンジニアとして携わった全曲について少し振り返ってみることととしました。

 

まず、前置きとして

書くとは言っても何を書けば野暮ったくないのだろうかと少し悩みました。

 

自分が思うミックスマスタリングエンジニアという立場は作り手である土橋君や、その楽曲からイメージや情景を感じ取り膨らませミックスに還元しようとするプロセスを経るものだと思います。

もちろん作った本人でないので自動的に自然とそうなるわけですが、作り手と同じ目線から景色を見られるように努めるという意味で忘れてはならない心がけなのだと思います。

同時に、エンジニアは山の上で作り手と同じ景色を見た後、山から下りて山肌をみて本当にそう見えるのか確認するという。“聞き手の五感“も備えている必要がありました。

 

今回はこの”聞き手としての部分”でどんなことを感じたかを軸に

自分がどう感じ、どんな景色を目指してミックスに臨んだかをここに表明することで、答え合わせをしてみたいというコンセプトで"何か"を書いてみようと思います。

 

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夏の空気

この曲から自分は、

カラッとした夏、神社のある裏山、広い田んぼ、田んぼの間を縫う未舗装の道には強い日差しと薄く揺らぐ陽炎、昔ながらの古民家の縁側、縁側からは青い空と入道雲、影と陽の光のコントラストがくっきりとしたカラッとした夏の情景

そんな空間を想起しました

 

また、

楽器構成がシンプルであることと、土橋君の生きざまやこのアルバムに懸けた想いに重なるかのような歌詞表現、それらにフォーカスするべく

スポットライトに照らされる中、歌い上げる土橋君の姿が見えるような空間として表現できたらいいなと

 

そんな目標を目指してミックスを進めました。

 

 

蝉をミックスして改めて考えたことは

音楽の基本は音を奏でる演奏そのもの、(これは絵で言うところの造形や構図・色彩に相当するものでしょうか?)

ミックスではそこに、リバーブで奥行きや光・陰影、コンプで空気感、パンやEQで広がり

などなどを付加し、整えていく

つまり、

ミックスとは作り手の頭の中にあるイメージを

音楽を通して聞き手の脳内で再現させる手助けをする

役目であるのだろうということでした。

 

作曲やミックス、音楽というものは実体がないものをその場に存在させる

繊細で掴みどころがないような、それでいて人の心を映し、人の心を動かし得るものであるという

なんとも神秘的なことに携わっているのだなと感じました。

僕の命はそこにあるのピアノのお話

今回、土橋悠宇1stアルバムSain'o O「僕の命はそこにある」でピアノを担当した川﨑未悠氏のコメントを紹介します。

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川﨑未悠氏

彼女は、今アルバムでアシスタントエンジニアとしてもミックスやサウンドエディトに
大きく貢献してくれた一人です。

 

以下、コメント全文です

 

この度は1stアルバムSain'o O発売おめでとうございます。


最初土橋さんから依頼を受けたとき、土橋さんの強いこだわりに沿うものができるか不安でした。

まず、土橋さんが粗く弾いてくれたのをもとにピアノパートのアレンジを始めましたが、
土橋さんと出会って間も無かったので、どういう経緯でこの曲ができて、土橋さんがどういうイメージとしてこの曲を表現したいのか、明確に見えず悩みました。
でもその後、一杉さんを交えて土橋さんとお話するにつれて、少しずつ土橋さんの周りにあるものなどを知りました。土橋さんが身の回りの環境や自然に対して感じてきた感覚、それは今まで私になかったものでした。

土橋さんのバックグラウンドを知ることによってイメージを共有できるようになったのと同時に、(自分が街中で育ったからなのか)身の回りで土橋さんのような感覚で生きてきた人にほぼ出会ったことがなかったので、新鮮な感覚でした。

それから、イメージが共有できたことで、土橋さんのこだわりやイメージをとり入れつつピアノを作り込んでいくことができたと思います。
最終的には自分なりにこの曲の解釈やイメージを深く考えてピアノパートに落とし込めたと思います。とても貴重な経験でした。

また、音色についてもエンジニアの一杉さんと三人でとても悩みました。
ピアノの音色一つで、こんなに見える景色が変わることに驚きましたし、こんなに音と向き合い、議論したのは初めてでした。
同時に、こだわりをもって話すことがすごく楽しいことだと知りました。
こだわったからこそ、この曲にフィットするピアノの音にたどり着くことができたと思います。

このピアノパートの存在が、「僕の命はそこにある」が持っている世界観を広げられるようなものに、日本を飛び出し世界まで広げられるような存在になっていたらうれしいです。

 

 

iTunesのリンクです↓

https://music.apple.com/jp/album/saino-o/1515569261

土橋悠宇 1stアルバムSain’oOレコーディング編集後記


今回土橋悠宇くんのアルバム

Sain’oOのレコーディング、マスタリングを担当しました

Medulla lab の一杉卓矢と申します

 

土橋くん、アルバムを無事発売できたことひとまずおめでとうございます。

 

手に取ってくださった方々の素敵なレビューに感化されまして

少しこのアルバムについて自分の観点から話を書こうかなと一念発起致しました

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sain'oO(サイン入り!)

さて、

このアルバムをリリースした今日までの収録、編集の数ヶ月はとても長かったように感じます

禅問答のような、哲学のような、それでいて合理性や再現性を求められる作業の連続。

テクノロジーヒューマニズムのバランス

モダンとレトロの在り処

そんな壮大なテーマをとことん追求する時間になったと感じます。

そこにはたくさんの学び、気付きがありました。

 

もちろん、これらは土橋くんの楽曲や人柄からもたらされる課題でありました

土橋くんの人間性やこれまで生きて来たバックグラウンドに根ざした楽曲たち

 

ミックスやアレンジという切り口からそれぞれの感情の場所、情景たちをより鮮明に広大に濃厚に補強し増幅できたら(それと同時に音楽的表現も豊かであったら)最高だろうと

そんな理想を目指し、それらを技術でどのように解決し、体現させるか日々考えて来ました。

 

そんな日々の哲学の結実、一つの答えが今アルバムSain’oOの音となったと言えます。

 

土橋くんの28年間の集大成となるアルバムではありますが、

自分にとっても今まで培って来た技術や表現、センスを全て総動員した

現時点での集大成と言えるものになっています。

 

ここまで、たった半年足らずの共同作業でしたが、結果的にこんなに全力でのコラボレーションとなったことにも驚きとワクワクが尽きません

土橋くんのとことん追求するこだわりの強さ、音に対する明確なイメージ、豊かな人間的感情と感覚、着実に目標に進んでいく推進力

これらのエネルギーに引っ張られてここまで出来たと思っています。

 

 

エンジニアとしての文章のはずが気持ちの話ばかりになってしまいました(笑

 

とにかく、そんなことを思いながらリリースまで土橋くんと共に突っ走って来ましたというバックグラウンドを感じながらまた音源を聴いていただければ幸いです。